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社会連携講座「インテリジェント施工システム」
自然災害の復旧工事を迅速かつ安全に、 ロボットやドローン、画像処理を活用
地震、津波、火山噴火など、日本は災害が多い国である。しかも少子高齢化は、世界で最も進んでいる。日本には課題が山積しており、まさに「課題先進国」と言えるだろう。しかし悲観する必要はない。ピンチはチャンス。課題を解決する技術や手法の開発にいち早く成功すれば、今後同じ課題に直面するであろう人たちに、その技術や手法を提供できるようになる。
被害拡大を防ぐため危険な場所で作業
現在、淺間教授や山下准教授が中心となって取り組んでいる研究テーマは、「インテリジェント施工システムの開発」である。ゼネコン企業である株式会社フジタの出資の元、2016年10月に社会連携講座として研究がスタートした。研究の目的は、すでに実用化されている「無人化施工システム」を進化させる点にある。いったいどんなものか、以下で説明しよう。
災害が発生すると、被害拡大を防止したりするために、一刻も早い復旧作業を求められるケースがある。例えば、火山噴火による火砕流や土石流が発生した場合、適切な場所に砂防堰堤を設置すれば、被害の拡大を防げる。しかし、作業現場は非常に危ない。そこに人間が入って作業すれば、二次災害が発生する危険性が高い。
この無人化施工システムの活用は、災害対応の場面で非常に有効だ。しかし、現場での実用性を向上させる上で、技術的にはまだ改善の余地がある。実用化当初の課題の1つであった通信の遅れに関しては、高速無線通信、光ケーブル通信との組み合わせ、画像圧縮などの情報通信技術(ICT)によって解決が図られているが、「まだ課題も残っている。それを解決するのがインテリジェント施工システムである」(淺間教授)。
魚眼カメラとドローンを組み合わせる
残る課題とは、遠隔操作する際に、建設機械の周囲の状況や地面の凹凸(地形)などを把握できていないことである。実際に雲仙普賢岳での実証試験では、建設機械が初めて現場に入ったとき、地面の傾斜が大きい場所で転倒する事故が起きたという。
周囲の状況の把握に関しては、魚眼カメラと画像処理技術によって俯瞰画像を生成、オペレータに提示し、建設機械の周囲を確認できるようにすることで解決する。車両の真上から俯瞰画像を提示する技術は、すでにクルマで実用化されているが、ここでは任意視点から周囲の状況を提示する技術などが新たに開発されている。いっぽう地形の把握に関しては、GPSとドローンを組み合わせることで解決を図る。作業現場に建設機械が入る前に、ドローンを飛ばして現場の状況を計測し、その映像とGPSデータを組み合わせることで地形や地面の状態を把握するわけだ。
社会連携講座の期間は2019年10月まで。それまでにインテリジェント施工システムを完成させる予定だ。「研究とは、凄い技術を作るだけでは不十分。社会に貢献しなければ意味がない」と淺間教授は語る。日本だけでなく世界中の人を助け、救うことに貢献する今回の取り組みは、まさに「人にとって使いやすく、社会の役に立ってこその技術」という、精密工学専攻に脈々と受け継がれてきたスピリットにも連なるものだと言えよう。