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光ピンセットとリアルタイム画像処理の融合により不規則形状・粗大粒子の姿勢安定捕捉を実現:大峰遼平(高橋・道畑研M2)、高橋哲教授ら

2024年5月30日 icon

東京大学の大峰遼平(精密工学専攻高橋・道畑研究室 修士課程2年)・増井周造特任助教・門屋祥太郎助教(研究当時)・道畑正岐准教授・高橋哲教授らによる研究グループは、新しい光ピンセット技術「輪郭トラッキング光ピンセット(Contour-tracking optical tweezers, CTOTs)」を開発しました。本研究では、従来の光ピンセットでは操作が難しい大きさと不規則な形状を持つポリスチレン粒子に対して、画像処理で抽出した輪郭に沿って集光ビームを走査することで、安定したトラッピング(捕捉)を実現しました。この成果は、生物学、ナノテクノロジー、コロイド科学など広範な分野での応用が期待されます。

光ピンセットは、マイクロスケールの粒子をレーザー光の焦点に捕捉し操作する技術であり、生物学、原子物理学、ナノテクノロジー、コロイド科学、そして生体組織の機械的特性の計測など、多岐にわたる分野で応用されています。しかし、従来の光ピンセット技術では、集光ビームを1点に照射して物体を捕捉するため、大きさが数十µm程度の単純形状(球形やロッド状)粒子の操作が限界であり、特に大きな粒子や不規則な形の粒子の操作は困難でした。
そこで、本研究では、顕微鏡で観察される粒子の輪郭を画像処理で抽出し、輪郭をトラッキングするようにレーザー光を動的に制御する「輪郭トラッキング光ピンセット(CTOTs)」を提案・実証しました。CTOTsは従来の方法と比較して、粒子に適用される光放射圧が均等に分布されるため、粒子の不規則な回転や動きが大幅に抑制され、操作の精度が向上します。実験では、粒子の輪郭に沿って50個の捕捉点を等間隔に設定し、50msかけて粒子の輪郭を1周するようにガルバノミラーで集光点を二次元的に操作しました。その結果、従来手法(一点照射)では捕捉できなかった粗大(50–120µm)かつ形状が歪なポリスチレン粒子を、CTOTsでは安定して捕捉することに成功しました。

本研究成果は、光ピンセット技術の新たな可能性を示すものです。本手法により、従来の光ピンセットでは扱うことのできなかった多様なサンプルの操作が可能になります。特に、生きたままの微生物の姿勢を制御しての観察・分析や、環境汚染で問題となっているマイクロプラスチックなどのサブmm程度の歪なサンプルの操作など、新たな応用領域での利用が期待されます。

本研究成果は、2024年5月13日に米国科学技術雑誌「Optics Letters」にオンライン掲載され、出版元のOptica(米国光学会)のNews Releaseでも紹介されました。


論文:
R. Omine, S. Masui, S. Kadoya, M. Michihata, and S. Takahashi, “Manipulation of large, irregular-shape particles using contour-tracking optical tweezers,” Optics Letters, vol. 49, no. 10, pp. 2773–2776, 2024, doi: 10.1364/OL.524424.
工学系研究科プレスリリース:
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-05-15-001
Optica News Release:
https://www.optica.org/about/newsroom/news_releases/2024/may/
new_optical_tweezers_can_trap_large_and_irregularly_shaped_particles/



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