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サスティナブルなヒューマンセントリック次世代ものづくり

人を中心とした生産システムを構築し
持続可能なものづくりを実現する 近藤伸亮 特任教授 × 梅田 靖 教授

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多様性に対応したシステムでポジティブな連鎖を促す

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梅田 靖 教授(人工物工学研究センター)

「ものづくりのあり方が大きく変わろうとしています。女性の社会参画が進み、少子高齢化により高齢者や外国人の労働者が増えたことで、ものづくりに携わる人が多様になっています。また、AIやロボット技術の発展に伴い、生産システムの中で人間が果たす役割が変わりつつあります。こうした変化に対応すべく立ち上げられたのが、人工物工学研究センターとトヨタ自動車による社会連携講座『サスティナブルなヒューマンセントリック次世代ものづくり』です。

本講座では、人の知識・技術・技能をデジタル化した情報システムプラットフォームを構築するとともに、人を中心とした持続可能な次世代のものづくりを担う人材を育成することを目的としています。AIやロボットにより自動化が進んでも、ものづくりの主役はあくまで人です。多様な働き手の一人一人に寄り添い、誰もが主体的に働き、満足感を得られる生産システムをデジタルの力で作る。そして、人の幸福を起点として、会社、そして社会をより良くし、さらなる人の幸福に繋げる。そうしたポジティブな連鎖を促す仕組みを作ることで、世の中を変革していきたいと思います」(梅田教授)

人の知的活動をデータ化して新たな価値を創出する

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近藤伸亮 特任教授(人工物工学研究センター)

「『サスティナブルなヒューマンセントリック次世代ものづくり』を実現するために梅田教授と私が取り組んでいるのが、『デジタル・トリプレット』の構築です。現在、現実世界の情報をコンピュータ上の仮想空間に再現するデジタルツインという技術の活用が始まっています。生産システムにおいてシミュレーションやフィードバックができる有用な技術ですが、『デジタル・トリプレット』では、さらに人の知的活動というデータを加えます。製造現場では熟練した技術者が経験や感覚を元に独自に改善を行っている場合が多くあります。その時、彼らが何を考え、どのように意思決定をしたかをデジタルデータとして残すことで多様な問題解決方法を共有するのです。それにより、熟練者から初心者への知識の伝達が容易になるだけでなく、過去の事例から新たな知識を発見することもできるようになります。これは現場の労働者がボトムアップで改善を試みる日本だからこそできる独自のものづくりシステムだと言えるでしょう。

人と協調して動くロボットの開発も大きな研究テーマです。自動車の生産ラインでは必要な部品を人の手で集めるピッキングという作業がありますが、振り返りや腰の曲げ伸ばしといった動きが多く、人によっては大きな負担になります。また、得意な作業や仕事への満足感も人それぞれに異なるため、一人一人の動きに応じて適切なサポートを行うロボットの開発を試みています。このように、人を中心とした生産システムを具現化していくことで、次世代ものづくりの実現に貢献していきたいと考えています」(近藤特任教授)

(初出:2022年度精密工学専攻パンフレット)

※関連ウェブサイト:
社会連携講座[サスティナブルな ヒューマンセントリック次世代ものづくり]

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