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先端メカトロニクス

環境に溶け込むアクチュエータが、IoT時代の情報の出口になる

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山本 晃生 教授

世界中で、IoT(Internet of Things)に対する取り組みが加速している。IoTではセンサを使ってさまざまな情報を取得し、クラウド環境に集める。蓄積した大量の情報をビッグデータとして活用することで、今までにはなかったアプリケーションやサービスの提供が可能になる。情報の入口となるセンサは世界中に増殖し、2023年には「トリリオン・センサ」の時代が到来するという予測があるほどだ。

情報の入口がセンサなら、その出口はアクチュエータだと山本教授は位置づける。アクチュエータとはモータに代表される、入力されたエネルギーを物理的な運動に変換するデバイスだが、より広い意味で「物を動かす」技術としてのアクチュエーション技術の開発に取り組み続けているという。

環境に溶け込むアクチュエータ

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図1 アクチュエーション機能を有するディスプレイ

センサと異なり、アクチュエータは小型化が困難だ。駆動のための電源供給の問題もつきまとうため、情報機器などへの実装は必ずしも容易ではない。課題のひとつは「環境に溶け込む、存在感のないアクチュエータを実現すること」と山本教授。ユニークで「不思議な動きをする」さまざまなデバイスの研究を進めている。

たとえば、静電気力によるアクチュエーション機能を有する液晶ディスプレイだ(図1)。ディスプレイ表面に統合されているのは、透明なプラスチックシート上に透明導電膜による電極を作り込んだ静電アクチュエータ。その見た目は、ただの薄い透明なシートだ。しかし、これに紙片などを載せて、電極に電圧を印加すると、横方向や縦方向に紙片を移動させたり、回転させたりすることができる。透明であるため、下にある液晶ディスプレイの映像と連動させて、さまざまな動きを作り出すことができる。

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このようにして映像ディスプレイとアクチュエータを組み合わせたシステムは、たとえば、物理シミュレーションの結果を実体化/可視化する用途で使うことができる。シミュレーション結果は、コンピュータ画面上に映像として表現するのが一般的だが、開発したシステムを使えば、シミュレーション結果を、映像と実物体の動きの組み合わせで表現できる。つまり、アクチュエータが「情報の出口」の役割を果たせるわけだ。

技術が変えるインタフェースの未来

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図2 ユーザに「力」を疑似体験させるコントローラ

研究室ではさらに、力や振動をユーザにフィードバックすることで触覚を模擬する、ハプティクス技術の開発にも取り組んでいる。たとえば、ゲーム機のコントローラにアクチュエータを埋め込み、手のひらを刺激する(図2)。このコントローラを使ってゲーム内の戦車を操作すると、ゲーム内の戦車が受ける力や衝撃を疑似体験できる。

こうした技術を実現するにあたっては、人がアクチュエータからの刺激をどのように知覚するか、という議論も不可欠だ。研究室ではアクチュエータの研究開発と並んで、人の刺激知覚に関する研究も進めており、これらが両輪となることで、自然な情報提示や直感的なインタラクションを生み出している。

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「さまざまなアクチュエーション技術をデバイスや環境に埋め込むことで、自然で直感的なインタフェースを実現したいと考えています。また、そうしたアクチュエーション技術をロボットに応用することで、環境によって駆動されるロボットなどの実現も期待できます」

世の中に無数のアクチュエータが溶け込む「ユビキタス・アクチュエータ」が現実のものとなる近未来の予想図を描きつつ、人と環境、技術が相互作用する革新的な技術の探求が続く。

(初出:2018年度精密工学専攻パンフレット)

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