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付加製造/Additive Manufacturing

3Dプリンタで最先端の義足を製造、 設計力、製造力、製品力の強化で実現へ

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新野 俊樹 教授

3次元形状を実体化する方法は大きく分けて3つある。1つは、大きな塊から不要な部分を削って必要な部分だけを残す除去加工。2つめは、材料を計量し金型などを使って形を付与する成形加工。3つめは、必要な場所に必要な材料を配置し接合することによって形を得る付着加工である。

この中で、最近注目を集めているのが、付着加工を自動化した付加製造(いわゆる3Dプリンティング)である。付加製造を使えば、自由な形状/構造の3次元物体をデータからダイレクトに製造できる。金型や治具を作るためのコスト、時間、技能を節約できる迅速性と簡便性が特長だ。

東京パラリンピックでお披露目へ

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しかし、である。付加製造は大きな課題に直面している。それは、現実のビジネスに移行させる取り組みが「スポッ」と抜けていることだ。実際に、現時点において付加製造の活用で成功を収めているビジネスは限定的である。こうした課題の解決に取り組むのが新野教授だ。現在の付加製造には、3つの力の強化が必要不可欠だと分析する。それは、設計力、製造力、製品力の3つである。

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付加製造技術により作製した義足用ソケット。機能的で美しい、付加価値の高いものづくりを訴求する。

いかにして、3つの力を強化するのか。新野教授が選んだのは、自ら先頭に立って、付加製造を活用する新ビジネスを創出する方法だ。すでに2015年に「MIAMIプロジェクト」※1 を立ち上げている。このプロジェクトで、強度が高く、軽量で、デザイン性の高い義足を付加製造で作製/販売するビジネスモデルを開発し、その過程で3つの力を強化する。新しい義足は2019年までに完成させて、「2020年の東京パラリンピックで、MIAMIプロジェクトで開発した義足を装着したアスリートが活躍することを目指す」(新野教授)。

※1 MIAMI (Manufacturing Initiative through Additive Manufacturing Innovation)プロジェクト=付加製造(AM)で作ることで圧倒的な付加価値を生み出せる製品や設計手法を研究し、製品力の向上を目指すプロジェクト。2015年に始まった。戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の中で進められている。

美しいデザインも機能の1つ

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設計力、製造力、製品力という3つの力の中で、とりわけ重要なのが設計力である。

例えば、義足を製造する場合、足に取り付ける「ソケット」を作成するために一人一人の足の形状を測って、カスタマイズする。従来は、経験豊富な義肢装具士が担当していた。しかし一方、付加製造を適用するには、カスタマイズ結果をデータ化しなければならない。毎回、人手でデータ化していたのでは生産効率が低い。CADソフトウエアの助けが不可欠だ。

ところが、義足の製造に向けたCADは市販されていない。そこで新野教授は、ソフトウエア企業のエリジオンと共同で専用CADを開発した。経験豊富な義肢装具士が持つノウハウは、約10個のダイヤルによる調整機能で再現した。

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製造力については、新しいスーパー・エンジニアリング・プラスチック「PEEK樹脂」を採用することで強化する。PEEK樹脂は、機械的強度や耐熱性が高く、軽い。航空機や人工衛星などの部品への適用も検討されているほどだ。この樹脂を粉体化し、レーザで溶かし、冷やして固め、再び粉体を重ねる。この作業を繰り返すことで3次元物体を作る。レーザの照射方法や、樹脂の最適化など、課題は残っているものの、開発は7合目に達したという。

製品力は、機能的で洗練されたデザインの採用で強化する。担当するのは、同じく生産技術研究所の山中俊治教授だ。新野教授は、「見た目の美しさやカッコよさも機能の1つ。カッコよければ、アスリートのモチベーションが高まるからだ」という。

MIAMIプロジェクトによって、設計力、製造力、製品力という3つの力は大幅に強化されるだろう。強化された力は、次なるビジネスの開発にも大きく貢献するはずだ。この結果、付加製造技術は良循環に入り、広く普及して行くことになる。

(初出:2017年度精密工学専攻パンフレット)