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放電加工/電解加工

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国枝 正典 教授
可視化技術の導入で進化する放電/電解加工の世界

世界市場で高い競争力を誇る「日本のものづくり」。その強さの源泉となっているのが金型だ。日本メーカーが製造する金型は、形状の複雑度が高いうえに、加工精度も極めて高い。こうした点で海外メーカーと差別化しており、市場での優位性を確保している。

それではなぜ、こうした金型が作れるのか。理由の1つとしては、放電加工や電解加工の高度な技術を備えていることが挙げられる。現在、国枝正典教授は、これらの加工方式のさらなる高性能化をテーマに掲げ、研究を進めている。つまり、「ものづくり大国日本」の競争力を今以上に高めることを目指しているわけだ。

いまもなお進化の過程

図版
放電加工のギャップを可視化:
透明な炭化ケイ素(SiC)単結晶を利用することで、電極と工作物のギャップで起きている現象を可視化できるようになった。

放電加工と電解加工は、すでに広く普及している加工方式だ。携帯電話機の筐体や、半導体チップのリードフレーム、飛行機のジェットエンジンのタービンなどで使う金型の製造で利用されている。

こうした加工方式の実用化が始まったのは意外に古い。放電加工は、1943年にロシアで基本原理が考案され、1954年に日本で最初の実用機が誕生した。それ以降、さまざまな改良が加えられ、今に至る。しかし、実用化から約60年が経過した現在でも、放電加工と電解加工とも完成された技術とは言いがたい状況にある。「放電加工と電解加工には、まだまだ分からないことが少なくない」(国枝教授)からだ。

その1つが、実際に加工が行われている空間で起きている現象を把握できていないことである。放電加工では、水や油の中に2つの金属を入れて、それらを向かい合わせに配置する。一方は製造したい形状に加工した電極で、もう一方は金型を作り込む超硬合金などの硬い材料だ。

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電極を超硬合金に近づけると、両者の間で放電が発生し、超硬合金の表面がわずかに削れる。放電の発生回数は1秒間に数十万回。これを長時間実行することで、超硬合金が徐々に削れて行き、電極の形状を転写できる。こうして、金型を製造する。

電極と超硬合金はいずれも不透明だ。しかも両者のギャップは1μm以下と狭い。従って、これまでは観察しようがなかった。ところが最近、「導電性を持つ透明な半導体である炭化ケイ素(SiC)単結晶がパワーデバイス用に製品化され、可視化に利用できるようになった。すでに、ギャップでの現象をかなり把握できるようになっている」(国枝教授)という。現象を把握できれば、最適化が図れる。今後、実験を重ねて、さまざまな現象を解き明かしていけば、金型のより高精度な加工が可能になるだろう。

考え方を訓練する

研究室

国枝教授は、実験に対する思い入れが強い。もちろん、研究にとってシミュレーションや数値計算も重要な要素である。しかし、未知の現象にチャレンジする研究では、実験をしてみないと分からないことが山ほどある。当初、想定していたこととは違う現象が起きるケースさえある。「私の研究室では、実験で見つけた課題を、実験を繰り返し行うことで解決していく。そうすることで、新しい知見が得られる」(国枝教授)と説く。

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さらに国枝教授は、「実験を重ねることで、ものの考え方の訓練が積める」と、学生に対してはその副次的な効果を強調する。研究を通じて身に付けた「ものの考え方」は、将来社会に出たときに必ず役立つはずだ。

(初出:2015年度精密工学専攻パンフレット)