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射出成形

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横井 秀俊 教授
「コモン・ペイン」の解決で、
一歩先を行く射出成形技術を実現へ

身の回りに数多く存在するプラスチック製品。複雑な形や高精度・高機能なものの大半は、射出成形と呼ぶ加工方法で製造されている。この方法は、流れる温度まで加熱したプラスチック材料などを、金型に圧力を加えながら充填して成形するというもの。まさに基盤をなす主要な加工技術である。

横井秀俊教授の研究テーマは、この射出成形だ。ただし、「“超”を極める射出成形」という不思議なテーマを掲げる。どのような意味なのか。「新しい技術と融合した最先端の射出成形が次々に登場する。限界に挑戦する成形技術には、想像を越えた現象の世界が広がっている。未解明な現象が、技術の発展を阻害する。それを解くことが目的だ」(横井教授)。

2つの強力なツールを開発

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可視化技術:
樹脂材料などを成形する金型内部を高速ビデオメラで撮影する可視化装置だ。数10msで樹脂を流す超高速射出成形機に取り付けられている。撮影後に映像を解析することなどで、新たな現象の解明の糸口を見つける。
研究テーマだけでなく、研究マネジメントにも特色がある。メーカーと大学が共同で研究を進める産学連携が基本構成だ。2000年以降だけでも、国内ののべ53社と共同で研究に取り組んできた。

その中には、ライバル関係にあるメーカーも含まれる。通常、ライバル同士は共同研究を嫌がるものだ。手の内を明かすことになるからだ。そこで横井教授は「コモン・ペイン」という考え方を取り入れている。「共通の痛み、つまり共通の技術課題は、お互い協力することでいち早く解決し、それに積み重ねる技術で正々堂々、競争しようという考え方だ」(横井教授)という。

今までなかなか解明できなかった現象である。そう易々と解けるものではない。しかし、横井教授の研究室には、独自に開発した2つの強力なツールがある。1つは可視化技術だ。樹脂や繊維強化複合材料などを溶融する加熱シリンダ、流動・固化する金型の内部を確認できる。金属の一部を透明なガラスで構成することで実現した。もう1つは、温度・圧力の測定技術である。流動する樹脂内部の温度分布や金属壁面の圧力分布を正確に測定できる。

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この2つのツールを駆使することで、コモン・ペインを解決して行く。そうして得られた知見はその後、シミュレータに取り込まれてエンジニアの開発・設計作業に大きく貢献することになる。横井教授は「日本という国の発展のためには最先端のものづくりが不可欠。そのためにはイノベーションを生み出し続け、常に一歩先に進んでいなければならない。我々は最先端の射出成形の分野でそれを実現する研究に取り組んでいる」と語る。

成功体験が財産になる

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目的は、解明されていない現象を解くこと。それだけに研究の難易度は高い。しかし横井教授は「誰もやっていない研究テーマに挑戦し、自分の力で未来を切り拓く。そうした成功体験が大きな財産になる」と説く。

研究室に新たに加わった学生は、すでに成功を体験している先輩研究者と交流しつつ、研究の進め方を学ぶ。横井教授は、全面的にサポートして成功へと導く。この結果、新たな成功体験者が生まれるわけだ。横井教授の研究室では、こうした「成功の系譜」が脈々と受け継がれている。

与えられる課題はハードで、学生には厳しい環境だ。それだけに得るものは大きい。今そこにある現実の難題をクリアする。その成功体験は、研究者・エンジニア人生での強力な武器となる。

(初出:2014年度精密工学専攻パンフレット)