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サービス工学

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太田 順 教授
看護作業を客観化・可視化して、
より良い看護環境を工学的に支援

モノづくりのためのエンジニアリングは、本来、“モノ”があって初めて成立するものだと考えられがちだ。しかし、日本の産業界を支えるエンジニアリングである以上、有形/無形にこだわる必要があるだろうかと考え、サービスという無形の産業に対して工学的にアプローチしているのが太田順教授だ。
「日本のGDP(国民総生産)で見ると、第1次産業、第2次産業を合わせても3割に満たない。実はサービス業を含む無形の産業が大多数を占めるのです。であるならば、こちらにこそ工学は貢献すべきではないでしょうか」

画像解析技術を使って看護教育を支援

図版 図版
看護ケア動作における自習支援システム
Kinectセンサを使った動作検出では、2次元方向だけでなく深度も計測可能。現段階では患者と看護学生を識別するためのカラーマークを体につけてセンシングを行っている

太田教授がサービス業のなかでも特に注目したのが看護だ。急速な高齢化の影響もあり、ここ20年間で看護系大学は激増しているが、一人ひとりの看護学生に対して効率的かつ効果的な教育ができていない。患者さんと接するうえではボディメカニクスへの理解が不可欠であるのに、教員から直接指導してもらえる時間が圧倒的に不足しているという課題もある。

そこで太田教授は、看護作業の様子を撮影した動画情報を解析して、手順や姿勢に無駄がないかなどを検証し、自習に役立てるシステムを、東京有明医療大学と京都工芸繊維大学との共同研究により開発。動作の検出にはゲーム機に使われているマイクロソフトのKinectセンサを使った。評価結果は自動で表示され、看護学生一人でも学習できる仕組みになっている。
「このシステムを導入したことで学習効果が高まったという有意な調査結果も出ています。しかし、看護では患者さんによって対応方法が異なるものですから、ベースとなる看護動作を客観化することが大変困難でした。そこで、今まで体系化されていなかった初期学習のポイントをまず明らかにして、基本動作を独学でじっくり学べるようなシステムを作ったのです」

ロボット研究からサービス工学まで

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自習システムのほかにも、効率的な看護業務を支援するワークフローシステムを構築。もっとも事故を起こしやすいといわれる経験2、3年の看護師に対して、最適化した作業手順やスケジューリング手法を提供する。

本来の専門分野はロボット研究だという太田教授。現在も、仲間と協力しながら道具を使って作業する群知能ロボットや物流支援ロボットなどを研究している。それらと並行して、サービス工学を研究するようになったのは、人間をより深く知りたいという思いからだ。
「サービス工学では、ショートスパンでの効率化だけを求めてはダメで、システムを使う人がしっかり成長できるロングスパンでのモデルを構築していかなければいけません。技術的には画像処理技術などが進化したことで人の動作のプロトタイピングをしやすくなったし、学際的な技術適用ができるのは精密工学の強みでもある。今後も技術面での精度を上げつつ、サービスの質を向上させるような研究を続けていきたいと思います」

人に寄り添うサービスと工学とは遠いようにも見えるが、実はもっとも工学的な分野なのかもしれない。

(初出:2013年度精密工学専攻パンフレット)