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マイクロ流体デバイス

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藤井 輝夫 教授
ナノ・マイクロサイズの化学実験場
深海や医療にも応用範囲が広がる

コンピュータの世界が、真空管からトランジスタ、IC、LSIと小型化・集積化へと進化を遂げてきたのと同じように、化学の世界でも小型化・集積化が進み、多機能デバイスであるマイクロ流体デバイスが誕生した。

マイクロ流体デバイスのメリットは、主に「高精度で高効率な分析ができる」「低コストで量産が可能」「マクロでできないことができる」という3点。MEMS技術やフォトリソグラフィといった加工・合成技術を使い、さまざまな機能を持つデバイスを作ることができる。

小さいからこそ深海探査で活躍

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高品質体外受精卵生産システム
哺乳類の受精卵を個別に培養・管理できるダイナミックマイクロアレイ構造のデバイス(左)。このデバイスを複数並べれば最大500個の受精卵を管理できる(右)

1999年の研究室創立以来、一貫してマイクロ流体デバイス研究を進めている藤井輝夫教授。「マイクロ流体」「分子エンジニアリング」「深海現場計測」「セルエンジニアリング」という研究コアのうち、近年特に注力しているのが「深海」と「セル(細胞)」だという。

「マイクロ流体デバイスで深海というと意外に思われるかもしれませんが、小さなデバイスであることのメリットが多々あります。まず、有人(または無人)の深海探査船や小型の海中ロボットにも搭載できるサイズであること。また、小さいため少ない試薬で計測が可能である点も強みのひとつです」

従来の深海調査では、探査船などで採取した海水を地上まで持ち帰り、それから計測等を行うしかなかった。その点、マイクロ流体デバイスを使えば、深海探査中、リアルタイムでのセンシングも可能になる。これまでに、自動校正機能を搭載した現場pH計測、ルミノール化学発光法による海底マンガンイオン定量検出、海洋微生物の現場生菌数測定デバイスなどを開発している。

受精卵培養やiPS細胞研究などにも応用

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セルエンジニアリングでは、マイクロ流体デバイスを使って、一度に多数の受精卵を安定して培養・管理するシステムを構築した。黒毛和牛の受精卵培養を行うため、マイクロ流体デバイスで子宮内膜を培養し、受精卵を育てる“場”として活用する。一つひとつのデバイスは小さいが、並列化すれば一度に1000個もの受精卵を育てることが可能だ。この仕組みを人の不妊治療に役立てたいという産婦人科医もいるという。

そして、世界中から注目を集めるiPS細胞が分化・増殖するプロセスを調べたり、これを制御するデバイスについても研究中。ライフサイエンスに関しては、藤井教授のなかに目指すものがある。「チップのうえに肝臓、腎臓、大腸、脂肪などの細胞を並べてヒトの代謝システムを再現するような流体デバイスを作り、薬の成分を流して、効果を評価する“Body on a Chip”というシステムができないか。これが実現すれば動物実験を減らし、本人の細胞を使って効果を評価することができます」

デバイスだけでなく周辺システムや装置類も自分たちで作るのが藤井研究室のモットーだ。学生には「どんな風に人や社会の役に立つかを考えて、応用を見据えて自分なりのデバイスを作ってほしい」と話す。手のひらに載るほど小さなチップだが、アイデア次第で応用の可能性は無限に広がる。。

(初出:2013年度精密工学専攻パンフレット)