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対災害ロボティクス

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淺間 一 教授
未曾有の震災を経て
-- 災害対応に求められるロボット技術

東日本大震災と、それに続く原子力発電所の事故が起きたとき、日本のロボット技術がスムースに導入できなかったという反省がある。その原因は技術そのものではなく、先進技術を社会に実装するうえでの問題という側面が大きい。たとえば、実用化に必要な予算をいかに捻出し、誰がその意思決定を下すのか。淺間一教授は現在、ロボット研究を取り巻く現状を変えるべく、さまざまな活動に尽力している。自ら「工学部教員としては珍しい」と評するその活動をリポートしよう。

優れた研究成果を社会に生かすことの難しさ

図版
ユビキタス被災者探索システムの開発
音声や映像などで被災者の情報を収集できる小型通信センサノードを被災地で運用。収集した情報を統合し、被災者の探索を行うべき場所を地図に表示する

2002年に始まった文部科学省の「大都市大震災軽減化特別プロジェクト(大大特)」において、淺間教授は理化学研究所と共同で小型通信センサノードと自律飛行船の研究に携わった。阪神・淡路大震災では建物の倒壊による犠牲者が多かったことから、いち早く被災者を発見できるようにがれきの中で、あるいは空中から情報を収集しようと考えたのだ。しかし、実用化にあたってはいわゆる「死の谷」が立ちはだかった。

「技術重視で開発した試作品は、そのままでは実用化できません。安全性や耐久性といった社会実装のプロセスにおける諸問題をクリアし、さらに必要な予算確保のもと運用、改善、保守といったループを回さなければ、せっかく開発した技術も廃れてしまいます」

東日本大震災と原発事故の後、淺間教授は研究者有志による超学会組織「対災害ロボティクス・タスクフォース」の主査に就任し、ロボット技術導入に関する指針作成や提言のとりまとめに奔走した。さらに、原子力委員会の「東京電力福島第一原子力発電所中長期措置検討専門部会」専門委員や、産業界との連携組織「産業競争力懇談会(COCN)」の「災害対応ロボットと運用システムのあり方」プロジェクトリーダーとしても活動し、ロボット技術の専門家として各界に提言を続けている。

「COCNでは、被災地や事故現場に入っていける『防災ロボット』、危険領域で人間に代わって作業する『無人化施工システム』、いずれ必要になる『原子炉解体システム』という3つのテーマを扱っています。こうしたロボットを使うのは国や自治体、電力事業者などに限られますから国が支援しないと開発も実用化も進みません」

好きな研究をやっているだけでは済まされない

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こうした活動の根底にあるのは、「いまや自らの好奇心や探究心に基づく研究をやっているだけでは課題先進国ニッポンの抱える諸問題は解決できない」という、危機感にも似た思いだ。これからの研究者には、時代の要請に応じて身をもって課題の解決に取り組む姿勢が不可欠となる。要求されるのは広い知識とソリューションを導き出す能力だ。「学生には我々教員の取り組みを間近で見て体験しながら学んでほしい」と淺間教授は語る。

精密工学専攻には一貫してニーズ主導、課題解決型の技術開発を行ってきた伝統がある。次世代のリーダーたるべき人材への期待は大きい。

(初出:2012年度精密工学専攻パンフレット)