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医工連携

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佐久間 一郎 教授
患者の負担を最小限に抑えつつ
成果を最大化する精密医療機器の世界

世界でもトップクラスの寿命を誇る日本。しかし、命は永遠ではなく、ほとんどの人が病に倒れて医療機関の門をくぐる。今後、患者の年齢層は高まる一方で、ますます“医療の高齢化対策”が重要になるだろう。

たとえば、身体的負担が大きい外科手術は高齢者や体力がない患者には不向きだが、内視鏡手術であれば耐えられるかもしれない。そんな低侵襲医療の発展のためには医療だけでなく、工学の知識と技術も必要である。

医療のスペシャリストと協業で挑む機器開発

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病変部位の細胞機能情報・疾患情報を計測・診断し、細胞レベルのミクロな治療を実現する

2007年から10年間の予定で設置された「システム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点」1 は医学系研究科と工学系研究科を中心とする、医工連携プロジェクトである。佐久間一郎教授はこのプロジェクトのメリットについて「設計段階から医療現場の意見を聞けますし、いち早く病院で使ってもらうこともできますから、工学部だけではできない研究ができる」と語る。

さらに、医学部との交流を通して、医療現場ではどんな機器が必要なのか、何が課題なのかなど、研究のヒントも探ることができる。たとえば、ある創薬研究において、薬効を調べるために実験動物の末梢血管での血流を図りたいという意見があったが、適当な計測器がなく、諦めていた。その話を聞いた佐久間教授の研究グループは超音波を使った測定機器を提案。現在はこの測定法により、創薬研究が大きく進展した。

「それまで超音波計測が創薬基礎研究に役立つとは考えもしませんでしたし、医療や創薬の研究現場からは超音波計測を使おうという発想は出ません。これは医工連携プロジェクトだからこそ生まれたアイデアです」

日本が誇る先進医療技術をより磨き上げるために

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数ある研究のなかでも、今後、特に注目したいのは内視鏡だ。かつては体内を見るためのカメラだったが、現在は多目的機器に変貌しつつある。たとえば、初期の胃ガンは内視鏡手術を採用する場合が多い。手術は患者の腹部に小さな穴をあけ、先端にカメラやクリップ、レーザメスなどを装着した内視鏡を挿入して行う。開腹手術よりも圧倒的に患者の負担が少ないのがメリットだ。

「現在の技術なら、内視鏡を使って原発ガンを切除するのはそう大変ではありません。難しいのはリンパ節などに転移したガンへの対応。100個ものガンの粒が並んでいると、なかには良性のものもあるかもしれないのに、安全策をとって可能な限り切除するのだそうです」

もしも内視鏡を使って切除すべき腫瘍かどうかを即判断できたら、ガン治療はまた一歩前進するだろう。佐久間教授は内視鏡に放射線診断か、超音波診断か、蛍光色素による識別か、何らかの機能を付与したいと考えている。いずれの方式も長所と短所を併せ持つので、医学部と議論を重ねながら、研究を進めていくという。

東大の工学系研究科のなかで、初めて医療分野と連携したことで知られる精密工学専攻。工学の力で医療の発展に貢献――そのスピリッツはいまも昔も変わらない。

(初出:2011年度精密工学専攻パンフレット)
  1. 文部科学省科学技術振興調整費「システム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点