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低環境負荷な表面研磨技術を開発―アクリル板と水だけでガラス表面とシリコン表面を平坦化―郭建麗(D3)、三村秀和准教授ら

2022年3月9日 icon
1.発表者:
三村 秀和(東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻 准教授)
郭  建麗(東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻 博士課程3年生)

2.発表のポイント:
◆アクリル板(注1)と水だけを用いた、低コストで低環境負荷な研磨法を開発しました。
◆アクリル板と水だけで、ガラス表面とシリコン表面を原子レベルで平坦化できることを実証しました。
◆光学機器や半導体機器で使われているミラーや半導体基板の製造における研磨プロセスに、大幅な低コスト化と環境負荷低減をもたらす可能性があります。

3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科の三村秀和准教授と郭建麗大学院生らのグループは、アクリル板を用いた革新的な研磨技術を開発しました。
鏡面を作る研磨技術は古代から存在しており、現在でも工業分野で大変重要視されています。この研磨技術は、コンピュータ、スマートフォン、自動車などに用いられている半導体電子回路基板の製造に不可欠な技術であり、望遠鏡、顕微鏡に代表される光学機器に搭載するミラーの製造にも用いられています。
一般の研磨技術では、研磨液を流しながら、やわらかいパットを表面に接触させ磨いていきます。現在利用されている多くの研磨液にはCeO2などのレアアースが組成の微粒子や、さまざまな薬液が含まれているため環境にやさしいとは言えず、より低コストで低環境負荷な研磨技術が求められていました。
本研究では、樹脂材料の代表であるアクリルに研磨に適した特性があることを発見しました。実際にアクリル板と水だけで、半導体基板素材の代表であるシリコンの表面と、ミラー素材の代表であるガラスの表面に対して、研磨が可能であることを確認しました。達成した平坦度は表面粗さの指標で0.1nm(RMS)以下であり、原子レベルで平坦なシリコン表面とガラス表面を実現しました。
今回開発した研磨法は、微粒子や薬液を一切使わない水だけで行う極めてクリーンな研磨法です。使用したアクリル板は特別なものではなく、よく目にする大量に製造されているアクリル板です。こうした理由から、本研究成果は、半導体分野の基板の研磨や光学分野のミラーの研磨において、将来、革新的な環境負荷の低減と低コスト化をもたらす可能性があります。
本成果は、2022年3月3日に米国科学技術雑誌「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載されました。

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